孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 不思議そうに片眉を上げる顔も、決して崩れたりしない端整さに、不意打ちを食らった胸は動悸を激しくする。


『店、案内してもらわなきゃいけないからな』

『そ、そうでした。それならのちほどメールで……』


 動揺しながらも、必死で平静を含んで応える私の詰まりかけた英語が、どこからともなく流れてきた音楽に遮られた。

 音量を大きくしながら出てきたのは、社長のスマホ。

 懐から取り出されたそれは、聞いたことのない音楽を途中で止めさせられ、「Hi.」と応答する社長の耳にあてられてた。


『片づいたか? いつ頃来れそうだ?』


 エレベーターの扉が開いていくのに合わせたように話し始める社長。

 薄い唇から紡がれる英語は、彼の聡明さによく似合っている。

 立ち姿も姿勢のいい社長のあとに続こうとすると、節ばった男らしい手のひらが、開いたエレベーターの扉を押さえた。

 さりげない気づかいに、また胸が大きく波立つ。


 実はここへ降りてきたときもそうだった。

 社長は息をするように、さらりとレディファーストをこなすのだ。

 いち部下をも女性として扱う紳士な所作と、滑らかに英語をこぼす見惚れるほどの美麗な顔に、心臓がぼんと単純に熱を上げた。



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