孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
「え!?」


 突然のことに思わず驚いた口は、素の感情を社長にぶつける。


『なんだ、デートの予定でもあるのか?』

『い、いえっ、で、ですが……っ』

『嫉妬深い男にでも怒られるか?』

『そ、そんな相手なんていませんけど……!』

『……お前、男いないのか。可哀想なやつだな』


 急に眉を下げて、心底憐れまれると、恥ずかしさと相まってなんだか無性に腹が立った。

 もちろん社長に向かって怒りを露にすることなんてできるわけはなくて、膨らしそうになるほっぺたを唇を引き締めて堪える。

 たしかに、社長を見送ったらそのまま真っ直ぐ家に帰るだけだったのは本当で、なんの予定もないのは寂しい気もするけれど。


 実際、彼氏なんていませんしね、生まれてこのかた……

 でも、ある意味それセクハラですよ、社長ぉ……


『じゃあなんの問題もないな。行くぞ』


 無言の怒りに気づくはずのない社長は、手のひらを私の背後に回して足を進める。

 触れられてはいないのに、社長の焼けるような手のひらの気配。

 それに背中を押され、有無を言わさず、白手袋の運転手がドアを開けて待つハイヤーの後部座席に導かれた。
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