孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
『あ、あの、私は……』


 まさか、秘書ごときの私を、この高級ハイヤーに便乗させるつもりなのかと、慌てて振り向く。

 だけど、待ち受けていたのは、足を進めない私を澄まして見つめる切れ長の黒い瞳。

 都会の夜の空よりもずっと深い漆黒に、ふっと吸い込まれそうになった。


『どうした』


 さも当たり前のように、私を後部座席に押し込もうとする社長からぱっと一歩後ずさり、手のひらを差し出してあわあわと先を勧める。


『私は大丈夫です、ので……』

『道案内がいないと行き先がわからないだろう』

『お店への地図なら、運転手さんにお教えしますので……』


 意地でも乗り込もうとしない私に、社長はとうとう眉をひそめてため息を吐いてしまった。


『こういう日本人の風潮は本当に理解できない。
 上司である俺に遠慮しているのか?

 女は、男にもてはやされてこそ、価値のあるものなんだよ』
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