孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
「そうだ、社長さん」


 コリコリとした食感の甘いイカの握りに頬っぺたをとろけさせていると、叔父橘社長にお茶のおかわりを出しながら切り出した。


「明後日の金曜、夜はなにか予定がありますか?」


 叔父の唐突な言葉に、せっかく味わっていたイカをごくりと音を立てて飲み込んでしまった。


「今のところ、特には」


 明後日のスケジュール帳を頭の中でめくり、まさか、と思う私の焦りを他所に、なんだろうかと首をかしげながらも社長はあっさりと返答をしてしまう。

 喉に詰まるご飯を、慌ててお茶で流し込む間にも、叔父は話を進めた。


「実は、うちの二階で月に一度、一見さんお断りの見世物をやっていまして」

「お、叔父さん……っ!?」


 苦しい喉元を叩きながら叔父の発言を止めようとするも、時すでに遅し。


「十名様限定なんですが、急に一件キャンセルが入りまして、席が空いているんですよ」

「へえ、なんの見世物を?」


 社長は叔父の話にまんまと興味を引かれてしまったらしく、私の制止など気にも留めてくれなかった。
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