孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 長い指の先までもしなやかな所作の美男子。

 しかも、“社長”にそんなことをしてもらうのだから、同僚も一瞬戸惑い、かっと頬を染めて慌ててエレベーターに乗り込んだ。


 そんなことをする上司どころか、そういう男性に私は今まで出会ったことがない。

 “社長”という肩書を持っているにもかかわらず、レディファーストをさらりとこなす。

 この日本男子は、きっとどの女性に対しても、そうするのに違いない。


 ……そっか、私だけじゃないんだ……


 社長室の扉を開ける長身を見つめながら、ふと胸を掠めた違和感が熱を冷ます。

 昨夜、私の手を取り特別な扱いをした米国育ちの美青年は、日本の全女性の頬をたやすく染めさせる罪な男なのだと、なんだかちょっとだけ胸の隅っこにツンと沁みるなにかを感じた。
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