孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
……なんのために留学までしたんだろう……?
そう思ってしまっては元も子もないような疑問が、毎日淡々と業務に従じる頭にちらつくようになっていた。
あまり考えないように、と日々自分を奮い立たせていた矢先。
社長付き秘書兼通訳という辞令は、もちろん不安の方が大きかったけれど、密かな期待もその陰で顔を覗かせていた。
機械然とした私に少しでも色味が着けば、これまでの努力は無駄なものじゃなかったんだと、自分の存在意義に理由を書き込める気がしたから。
よし、と薄いあさぎ色の着物を手に取り立ち上がる。
昼間見た社長室からの空に近い色で、大きな牡丹が隈なく描かれている。
あの空に映え、世のすべてを統べる瞳を思い出し、胸がまたきゅっと音を立てた。
見世物としての私ではなく、私自身を見てもらいたいと思っている自分に高揚し、姿見の前で今日も一日気張って働いたOL仕様の服を脱ぎ落とした。
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そう思ってしまっては元も子もないような疑問が、毎日淡々と業務に従じる頭にちらつくようになっていた。
あまり考えないように、と日々自分を奮い立たせていた矢先。
社長付き秘書兼通訳という辞令は、もちろん不安の方が大きかったけれど、密かな期待もその陰で顔を覗かせていた。
機械然とした私に少しでも色味が着けば、これまでの努力は無駄なものじゃなかったんだと、自分の存在意義に理由を書き込める気がしたから。
よし、と薄いあさぎ色の着物を手に取り立ち上がる。
昼間見た社長室からの空に近い色で、大きな牡丹が隈なく描かれている。
あの空に映え、世のすべてを統べる瞳を思い出し、胸がまたきゅっと音を立てた。
見世物としての私ではなく、私自身を見てもらいたいと思っている自分に高揚し、姿見の前で今日も一日気張って働いたOL仕様の服を脱ぎ落とした。
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