世界できっと、キミだけが


「いやっ…助け…っ!」



抑えつけられ、覆面を被った人物が視界に入る。
私は、咄嗟に抵抗しその覆面をはぎ取った。




「っ、」

「…っ!あ、んた…」



覆面の下から出てきたのは、見覚えのある顔。
あのオートバイの男。

オートバイの男かは確信が持てないけど、あの時病院にいたあの男で間違いない。
私を襲うってことは、やっぱりこの男が…。



「チッ。やっぱり覚えてやがったか」



男は舌打ちをすると、私の首元に手を持ってくる。
私は逃げようと身体を捩った。

そんな抵抗はいとも簡単に防がれ、首に手が押し付けられる。
空気がせき止められ、苦しい。



「う…ぐ…ぁ……」



嫌だ。
死にたくない。


私、まだ。



助けて。
助けて、竜。



「顔を見られたからには、生かしておけねえんだよ。残念だったな」



男の血走った眼が目に焼き付く。



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