世界できっと、キミだけが
「あのね…、菜穂にだけはいっておきたいことがあるの」
「え?」
「私ね…、竜の事が好きなんだ」
それが叶わない恋だとしても。
残したい。
誰かの心の中に。
私が彼を好きだった事実を誰かに知っていてほし。
「…うん。そっか!私、応援するよ!」
菜穂は目を輝かせてそう言った。
私はにっこりと笑う。
「でも、苦労しそうだよね。大人の男の人だし。学生と社会人ってハードル高そう!」
「うん」
「でも、私は応援してるからね」
「ありがとう。でもね、きっと無理なんだ。竜には好きな人がいるから」
宇都木幸子さん。
特別に想っていると言っていた。
特別って、そういうことでしょう?
私は彼女には敵わない。
住む世界が、違うんだから。
「だからなに?そんなの振り向かせちゃえばいいの!」
「菜穂…。ふふっ。そうだね」
ああ。
菜穂に言ってよかった。
心のつかえが取れたみたいに晴れ晴れしい。