上司な彼とルームシェア
出来る女を崩してみたい──俊哉side
それから、晩飯がまだらしい彼女をダイニングへ通し、今夜は珍しく全員が揃って居たので、皆で彼女を囲んで自己紹介と相成った。
皆の話を聞きながら、コンビニ弁当を前に緊張している彼女を見て、なんとなく声をかけてみた。
「唐揚げ、美味しそうだねぇ」
「いや、コンビニ弁当なんで……1つ要ります?」
「え、くれるの?じゃあ、あーん」
と緊張をほぐすべく冗談を跳ばしただけだったが、次の瞬間、完全スルーされる気だった口に唐揚げが入ってきた。驚いたが、動揺を見せてはいけないと思い、
「んー、おいひーね」
と取り繕ったが、石化していた幾太とかなえに怒られた。
うん、自分でもちょっと間違えたとは思ったが、彼女が本当にするとは思わなかった。
しかも、かなえの俺に対する勘違いも訂正しなければと思った。
以前、偶々かなえが勤めるホテルの近くのキャバクラに接待で無理矢理連れていかれ、帰り際にキャバ嬢に強引に抱き付かれキスされている現場を、帰宅途中のかなえに目撃されてから俺に対する態度がガラリと変わったのだ。
取引先もいる手前、そのキャバ嬢を無理矢理引き剥がすことも出来ず、かなえは凍りそうな程の冷たい視線だけ寄越して消えていった。
それから、かなえの中では足蹴くそういう所に通うオジサン扱いのようだ。
まぁ、家では皆と隔たりなく楽しく居られるようにだらしなく緩い感じで過ごしていた俺もその一因であることは否めないが…。
叱られながらも、隣で少し困ったようにはにかむ由紀恵の顔に、何だか擽られるような、体のどこか奥に何かが湧いてくる感覚を覚え、ふっと笑みを溢していた。