上司な彼とルームシェア
支部長補佐、初日。
桜井支部長が支部の皆に紹介してくれている最中、集団の中に由紀恵を見つけたときは驚いたが、まだ此方を見てなくて俺には気付いてない様子だ。支部長の口から俺の名が出たときには、天井を目だけで見上げるようにして小首をかしげていた。

俺は彼女を見据えながら挨拶の言葉を述べると、やっと彼女と目があった。そのちょっと困った顔が職場でも見られるのか、とテンションが上がった。


──だか、仕事中の彼女は別人に見えた。あれからこっそり観察したが、スマートに仕事はこなすし、後輩に慕われ、年上の男性社員からも信頼が厚いようだ。隙の無い、出来る女だ。

今日も会議用の書類を急ぎで彼女に渡しに行ったときも、揺さぶりをかけても、黙々とパソコンキーを打って対応していた。

しかも、昼抜きでもあれだけの束をきちんと時間までに届けてくれ涼しい顔をしていた。


それに俺の探求心は煽られ、会議中も3分の1ほど彼女をどう崩すかに意識を持っていかれた。
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