上司な彼とルームシェア
確信と焦り───俊哉side
喉の乾きで目が覚めた。大分体が軽くなったのが分かる。
水分を求め台所へ向かうと、旨そうな匂いと由紀恵の姿があった。

普通に会話してたはずなのに、だんだん胸が苦しくなる。
もう、ごまかせそうもない。うん、好きだ…こいつが。
しかもいきなり「トシさん」と言われテンパる頭を冷すべく、急いで風呂場に向かった。


もう確信した俺は、彼女との距離を詰めるべく夕食は由紀恵の隣を陣取った。

だが、失敗だったか彼女は向かいに座る二人に微笑みを向けている。
こっち向けよと視線で刺していたら、不意にこっちを向き小首をかしげる可愛い動作をしやがる。動揺を隠すように再び箸を進める俺に、彼女は体調を気づかってくれたが、目の前の野郎2人だけに食わせてなるかと断った。


腹も満たされ、ソファで寛いでると由紀恵が洗い物をするとは立ち上がったのでこれはチャンスだと思い、俺は手伝いを買ってでた。でも俺だけではなかった。

幾太に睨みを効かすが、やつは動じず涼しい顔をしてやがる。殺られる前に殺らなければと焦燥感にかられるが、由紀恵の提案で、冷静さを少し取り戻し、「焦りは禁物、慎重にいこう」と思い直して湯呑みを持った。


そう、慎重に───と思っていたのに、俺の中では全然その焦りは消えてなかった──。
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