上司な彼とルームシェア
本気ですか。
「…わりぃ、この後何か予定ある?」

少しの沈黙の後、支部長補佐と顔をこちらに向けた。
何だかいつもと感じが違うその表情に、すっと怒りは冷まされ「いえ、大丈夫です」と答えた。

「じゃ、飯行こっか」と支部長補佐がデスクの上をさっと片付けた。

それから、2人で例の創作居酒屋へと足を運んだ。

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「悪かった……この3日妙な対応して」
「……はい。でも、ちゃんと言ってくれれば私も支部長補佐のやり方に合わせますから、言ってくださいね。そういうサポートは事務方の仕事ですし。」

俊哉は今日は飲むピッチが早い。由紀恵は病み上がりなのにと少し心配していた。

だが、やはり俊哉の顔色は変わることなく、むしろ家にいる時より落ち着いて見えた。

「由紀恵ちゃんの仕事は申し分無いよ。今回は俺の気持ちの問題」
「気持ち?」
「ごめん、もう単刀直入に言う。……俺、由紀恵ちゃん好きだ」
「…………え、あ、はい」

「それってオッケーって事?」

「あ、えーと……」


「ふふっ、ごめん。驚いたよな。俺もビックリしてるもん。会ってほんの数日で…こうなるとか。」

「……はい」

「だから、とりあえず気持ちだけ分かっといて貰えるかな?今すぐ返事くれとか言わないから」

「…わ、かりました…」


「明日からはちゃんとする。まわりくどいことはしない」

「はい」

「仕事も…由紀恵ちゃんへも……本気で行かせてもらう」


今まで見た事の無いその俊哉の表情に、由紀恵は喉を詰まらせ、次の言葉は出なかった。

「じゃ、明日も仕事だし、さっさと食っちまおうか」

ふっと俊哉の表情が戻され、声のトーンも上がった。

「……はい、頂きます」

でも、由紀恵の緊張はなかなか解けなかった。


これからどうなるんだろう、自分はどうすればいいんだろう…と頭の中で反芻しながらの夕食は、ただ胃の中を満たすだけの作業となった。


本気ですか……支部長補佐。
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