上司な彼とルームシェア
決意──俊哉side
由紀恵に気持ちを伝えてから、彼女の様子がおかしいのは分かっていた。自分に原因があることも。

家では最近自分が残業が多いため、顔を遇わせない。社内では目が合えばふいっと反らされるし、書類を直接持って行っても、返ってくるときはいつも橋田さん(結実)経由だ。

良くても悪くても、結論を急いだ方が良さそうだ。
仕事にも支障が出るであろうし、この状態が長く続くのも辛い。

今日は土曜日。特に予定もないし、彼女もまだ部屋に居るようだ。他のルームメイトは仕事で出ている。昨日も会社の帰りに食事に誘おうと思ったが、定時を15分過ぎた辺りにはデスクに由紀恵の姿はなく、結局声を掛けられないまま一日が終わってしまった。

チャンスは今しかないと、彼女の部屋のドアをノックするべく手をあげると同時にドアが開いた。

「あ、ビックリした。おはようございます。ちょっとゆっくり寝ちゃってました。で、どうしましたか?」

あまりにも普通な態度の由紀恵に、手をあげたまま固まっていた。

「あ、ちょっと…は、なしがあって…」
「私、お腹空いちゃったんで朝ごはん食べながらでもいいですか?」

「…あぁ、分かった…」

出鼻を挫かれた俊哉の決意は遠くなる由紀恵の背中のようにみるみる小さくなっていった。
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