上司な彼とルームシェア
溢れる本音、本能
歯磨きを終え部屋に入り、ベッドで膝を抱えて寂しい想いでいっぱいになり、泣きそうになった。

(駄目だ、今泣いたら明日のデートに腫れぼったい顔で行くことになる)
と気分転換に台所に水を取りに行こうとドアを開けた。

すると、ドア前に俊哉が立っていた。

どうしたの?と声を発する前に唇を塞がれた。
急な出来事に後ずさるが、距離は詰められたままベッドへと倒れ込む。

すると、少し冷たい手が脇腹を霞め、胸にたどり着く。

俊哉から求められる嬉しさで、さっき緩んだ涙腺から雫がこぼれた。

その時、ピタリと俊哉の動きが止まり、体を離した俊哉に涙を優しく拭われた。

さらに離れようとする俊哉にはっとした由紀恵は、

「違うのっ、そうじゃないの!」としがみついた。そして、そのまま続けた。

「嫌で泣いてるんじゃなくて!その…あの……嬉しかったの…」と尻窄みになったが、俊哉へは伝わったようだ。

「そっか。でもがっついた、わりぃ」と優しく抱き締めてくれる。

彼の腕の中で首を振る。

「じゃあ、由紀恵の全部、貰っていい?」

と耳許で囁かれた。由紀恵は身悶えながらも、首をコクコクと縦に動かした。

そして、互いに求め合い、指を絡め、汗ばんだ体を寄せ合い、深い眠りについた。
< 48 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop