常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
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伝票はすでに亜湖が書いた。上條課長の捺印も終えている。なのに、大地も亜湖も昨日のような「二人羽織」の体勢のまま、小会議室Bを出て行かない。

大地が背後からすっぽりと亜湖を抱きしめようとすると、彼女がくるりと振り返る。
大地が亜湖の両頬を大きな手のひらで包み、彼女の揺れる瞳をじーっと見つめる。

「……課長、今日は朝から時間外取引(P T S)のことで持ちきりですよ。すごいですね。一発逆転だわ」

亜湖がふふっ、と笑う。

「奇跡的に運がよかったんだよ。こんなことはもうない」

大地はそうつぶやいて、彼女の鈴のような笑い声を制するように、くちびるを塞いだ。

「んっ……」

亜湖の声が漏れる。昨日のような、鳥の(ついば)むようなキスではない。どんどん深くなっていく。

「……口、開けろ」

大地が(かす)れた声で(ささや)く。
亜湖の瞳に、とまどいの色が表れる。

「いいから、いいから」

初めて聞く、焦れた甘い声だ。

二人の顔が近づいて、再びくちびるが重なる。
思い切って薄く開けた、亜湖のくちびるの間に大地の舌が入ってきた。

亜湖がびくっ、とするのにも構うことなく、大地はさらに奥へと進ませる。
やがて、亜湖のやわらかい舌を捕らえる。

今まで強引ながらもやさしく接していた大地が、弾かれたように荒々しくなって、亜湖の舌を味わい尽くそうとしだした。

突然の激しさに、亜湖は必死で大地にしがみつくことしかできなかった。亜湖は椅子に座っているのに、腰が抜けることがあるというのを、初めて知った。

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