常務の愛娘の「田中さん」を探せ!

「……ダメだ、止まらない」

大地は苦しげに言って、亜湖の首に巻いたブルーのスカーフを一気に解いた。
それから、ブラウスのボタンを立て続けに三つほど外すと、(あら)わになった亜湖の真っ白な首筋から鎖骨にかけて、くちびるを滑らせた。

荒々しい大地の息を素肌に感じていたら、突然、チクッと痛みが走った。

「……っ!」

そのとき、大地のスーツから低い振動音がした。

大地が舌打ちした。ジャケットのポケットからケータイを取り出す。会社用だ。

「……悪い。もう戻らないと」

大地が不機嫌な声で言った。もともと勤務時間内に勤務外のことをしていたのである。

「続きは金曜日の夜な」

大きな手で亜湖の頭をぽんぽん、として……名残惜しそうな顔で亜湖の口にちゅっ、とキスをして……大地は小会議室Bを出て行った。

残された亜湖はブラウスのボタンを留めて身なりを整えた。でも、火照(ほて)った顔は元に戻るまで、まだまだ時間がかかりそうだ。


そして、亜湖も小会議室Bをあとにした。

< 127 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop