常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
「常務には、おれでは無理だと判断されたら、それでいいんだ。常務一人動かせずに、社内改革で全社員を動かせられるわけないからな。こういう話をする機会がほしいだけだ」
大地は亜湖の瞳を見つめて、はっきりと告げた。
「気難しそうな人だけど、あの水島社長とおれの親父に対等に渡り合える、唯一の人だからな」
口の端を歪めて、少し苦笑した。
「ただ、絶対、常務にはわかってもらえるように、説得はするつもりだ」
大地が大きな手のひらで、亜湖の頬に触れる。
「亜湖……おれを支えてくれ」
縋るような目で亜湖を見る。
「おれは経営企画本部長になって、実績を上げて、副社長になって、さらに改革を進める」
亜湖はただただ、大地を見つめることしかできない。
「慶人にはできない、かなり厳しいことをやるつもりだ。敵も増えるだろう」
少し哀しい顔になる。
「今あるものをぶっ壊して新しく創るのは、おれの方が向いてる。慶人は今あるものを粘り強く継続させる方に向いてる」
そして、少し寂しげに笑う。
「おれは副社長にはなれても、社長にはなれないかもしれないぞ」
……この人は、嫌なことをそっくり引き受けて、上手く創り変えることができたら、きっと新しい人に、そっくり譲って会社から消えるつもりだ。
……もうすでに、そこまでの覚悟をしているんだ。