常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
『亜湖、おとうさん、なにか食う物取ってきてやるから、絶対にここを動くんじゃないぞ』
亜湖はこくっ、と肯いて、おとうさんを目で送った。
会場全体を見回していると、着物姿の小さな女の子がめずらしいのか、周囲からじろじろ見られているのに気づいた。
目立たないように壁際にいるのだから、自分に注目しないでほしい、と亜湖は思った。
向こうの方に同じ小学生くらいの子たちがいるのだから、そっちを見てほしかった。
そう思って見ていると、向こうから男の子が一人、こっちの方にずんずん歩いてきた。
途中で立ち話をしている大人たちをひらりとかわしながら、男の子は一直線に亜湖の許へやってきた。
濃紺のブレザーと揃いのズボンを身につけた、小学校高学年くらいの背の高い子だった。
『おい、おまえ……なんで、こっちに来ないんだ?』
開口一番、男の子は訊いた。
『……おとうさんが……ここを動いちゃ…ダメって』
亜湖は俯いて、小声で答えた。
……なんだか、この子……怖い。
ますます俯いてしまう。
『あ、そうだ、市松人形だ!おまえ、松濤のじいちゃん家にある市松人形そっくりだなっ』
……どうして男の子って、亜湖がなにもしないのにいじわる言うのかな?放っておいてくれたらいいのに。
男の子はしゃがんで立て膝になると、下から亜湖の顔を見上げた。
目が合う。じーっと顔をガン見される。
『やっべぇ……おまえ、おれのどストライクだ』