常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
「……しまった」
……亜湖は実家暮らしの「箱入り娘」だった。
今までにつき合ってきた女たちは、誘えばあたりまえのように夜をともにしてきたから、気が回らなかった。
大地は顔を顰めた。つき合いはじめの印象が肝心だというのに、欲望のままに亜湖を家に連絡もさせずに外泊させてしまった。
……おれは、なにやってんだ。
どうも亜湖が相手となると、いつもの要領の良さがこっぱみじんこになる。
大地の曇った顔色を見て、亜湖が強張った顔になった。
「……めんどくさい、よね?
……こんな……わたし……」
思いつめた目で亜湖が尋ねる。
「大地に……ふさわしく……ない……」
そして、その目を伏せる。涙が込み上げてきたのか鼻声だ。
……うわーっ、また亜湖が勝手に悩みだしたっ。そっちの方が、いちいち誤解を解く方が、何百倍も何千倍もめんどくさいからっ。
「いやいやいや、そんなことないから」
とにかく、まずは亜湖をぎゅーっと抱きしめて、心を落ち着かせる。亜湖の「不安対策」への攻略法だ。頭も撫でておくと、さらに効果的である。
「とりあえず、うちに電話してみな?」
やさしく耳元で囁くと、落ち着きを取り戻した亜湖は、こくっと肯いた。