常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
『……名古屋のおとうさんには、連絡してないんでしょ?』
母親は静かな声で尋ねた。
「……うん」
亜湖が答えた。
『おかあさんもね、おとうさんには亜湖が昨夜帰ってこなかったこと、まだ電話してないの』
……えっ?
亜湖はてっきり母親が名古屋にいる父親に連絡して、今頃家中大騒ぎになっていると思っていた。
『おとうさんには、内緒にしといてあげる。
……だけど、一つ条件があるわ』
亜湖の眉間にシワが寄る。
「条件、って?」
『今日、その「大切な人」に、うちまで送ってきてもらいなさい』
亜湖は大地の方へ振り向いた。
「おかあさんが『うちまで送ってきてもらいなさい』って?」
大地がしっかりと肯いた。
「……おかあさん、彼がうちまで送ってくれるって」
『そう……じゃあ、待ってるわね』
母親との通話が切れた。