常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
だけど、一つ、確信したことがある。
冷蔵庫の中にはビールと酒のつまみになるような食材しか入ってなかった。パスタの乾麺すらなく、炊飯器は一応あるがお米もない。炭水化物類はトーストしかなかった。
だから、こんな朝食のようなメニューになってしまったのだが。
さらに、おしゃれでありながら機能的なキッチンなのに、調味料もキッチン用具もほとんどない。
……女の人の影がまったく窺えないのだ。
「……すっごく使いやすいキッチンなんだけどね」
料理好きの亜湖が、ダイニングテーブルのいらないほどゆったりと広いペニンシュラキッチンを見ながら、ぼそっとつぶやくと、
「これから、おまえの好きにしていいぞ」
大地が背後から抱きついてきた。
亜湖の頬から首筋にかけて、ちゅっ、ちゅっ、とキスをするので、あわてて身体を離す。
「……今日はもう、無理だからね」
とたんに、大地がふてくされた子どもの顔になる。
「おれの方が無理……そのポロシャツ、ヤバい……襲いたくなる」
本当は亜湖が料理しているときから、背後から抱きつきたくて仕方がなかったのだ。
「さ、食べよっ」
亜湖は大地の腕をとって、ペニンシュラキッチンのカウンターへと促した。