常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
「……コーヒー、砂糖とミルクいる?」
大地が尋ねた。
「あ、ミルクだけ、で」
田中 沙恵子が答える。
大地はユニマットの「コーヒー【ミルク】」のボタンを押した。しんと静まり返った中、カップがころん、と降ってきて、コーヒーとミルクが上からぽたぽた落ちてくる音だけが響く。
田中沙恵子にコーヒーを渡してから、大地は対面のベンチソファに腰を下ろした。
「あ、すいません……」
おずおずとコーヒーを受け取った、その顔には見覚えがなかった。
同じ営業部でも、二階の営業部一課・二課と四階の法人営業課とは会議のときくらいしか交流がない。
「わたし、この春、この本店に異動してきたんです」
彼女はそう言いながらコーヒーをかき混ぜた。
「社食も行かないから、わたしのこと、見たことないでしょう?」