溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「さてはお前、コロパゴで働きたいんだろ」
九条さんの言葉を頭の中で反芻していると、再び掘り返すように九条さんが言う。しかもやや睨みつけながら。
「そういう意味でもないですから! まだまだ九条さんの下で頑張るつもりです!」
そう叫ぶ私を見て、九条さんが僅かに口の端をあげ笑う。
「じゃあ、1日で今日の案件を片付けろ。それと同時進行で新しくリリースするアプリのデザイン案を10個な」
「うっ、鬼」
「なんか言ったか?」
「い、いえ。なんでもないです。頑張ります」
しどろもどろに言うと、九条さんの大きな手が伸びてきて、私の頭をかき回すように撫でる。
「もう! 何するんっ……」
「どっちにしろ、譲る気ないけどな」
乱された髪を必死に手で整えていると、僅かに聞こえてきた声に、ん?と首を傾げる。譲るわけないって、どういう意味……?
「帰るぞ」
なんてことを考えているうちに、九条さんはどこか機嫌良さげに歩き出した。
「あっ、待って下さいよ! 九条さん!」
わずか数秒で小さくなっていく九条さんの背中を慌てて追いかける。この辺りは土地勘がないのに! 置いていかないでー!
「九条さーーーん!」