溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜

そう思っていた直後、オフィスの電話が鳴った。慌てて握っていたマウスを放ると、受話器に持ち替え会社名を名乗った。

「あの、私アールローズの者です」

たどたどしい私の電話応対の後に聞こえてきたのは、聞き慣れない名前。

ん? アールローズってなんだったっけ?と、頭をひねる。するとすぐに反応しなかった私に気が付いた相手が、続けてこう言った。

「千葉です。千葉朱音です。昨日打ち合わせに来てもらった

そこまで聞いてあー!と声が上がった。アールローズというのは朱音さんのお店の名前だ。打ち合わせまでしておいて忘れるとはなんて失礼な。

すぐに西沢です!すみません!と謝ると、なんだ青葉ちゃんか、と受話器の向こうから明るい声が聞こえてきた。

< 142 / 291 >

この作品をシェア

pagetop