溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「いい男だとは思うけど、上司と恋愛なんてめんどくさくてごめんだわ。それに気がついてないようだから代弁するけど、好きなのはあんたでしょ」
「はっ……?」
えぇ!?
「私、間違ってる?」
愕然とする私に流し目で色っぽい視線を向けるユリさん。否定したいのに、人はあまりに驚きすぎると咄嗟に声が出ないらしい。
「……ち、違います! それはないです!」
「あらそう? さっき二人の様子を見てる西沢の顔、悲しそうだったけど」
……悲しそう? ユリさんじゃなくて私が?
そう言われ頭を抱える。確かに昨日から親しげな二人を見ていると胸の奥がもやもやしたような気持になった。だけどそれって好きってことなの?
「それに私が九条さんを好きだと勘違いするくらい、九条さんのこと見てるってことでしょ? 何を見て勘違いしたかはしらないけど、どうせその時だって一人でモヤモヤしてたんでしょう」
そう言われると思い当たる節がある。ここで二人が親密そうに話していて、気になって気になってドアで額をぶつけてしまったっけ。
「青葉ちゃんと九条くん、すごくお似合いだと思うけど?」
戸惑いを隠せない私に、ずっとカウンター越しから聞いていたおばちゃんまでがそう言うからさらに驚いた。
「やだ、おばちゃんまで変なこと言わないでくださいよ」
「別に変じゃないでしょ。私はずっと二人がそういう関係になればいいのにって、密かに思ってたけど」
優しい笑みを浮かべそう言うおばちゃん。まさかそんな風に見ていたなんて!ますます混乱して、二人の視線に耐えられなくなった私は、頭を抱えたまま突っ伏した。