溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


午後からの仕事は手に付かなかった。女=私もそうなわけで、つまり間接的に否定されたわけなのだから。

そんな中、九条さんが連絡ボードにササッと何かを書き込んでいるのが視界に入った。その後すぐ荷物を抱え、お疲れと出て行く。その瞬間、ホッと肩の力が抜けた。

あれから話しかけられないように目を合わすことも避けていた。きっと動揺するだろうし、至らないことを口走りそうで怖かったから。

今のうちに滞っている仕事を片付けよう。気合いを入れ直すようにグッと伸びをする。と、その時、ふと九条さんのデスクに置かれた入館証が目に留まった。

あれ、もしかして忘れてる?これがないと明日入れなくて困るんじゃ……。

さっきまで避けていたくせに、九条さんの困る顔が頭を過ぎると、あれこれ考えるより先に行動に出ていた。
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