溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜

おばちゃんがどうして九条さんにそんな話を持ちかけたのか、いつからそんな計画をしていたのかは帰り際に判明した。レジを済ませた私にこっそりと

「いつかのお礼」

そう耳打ちしてきたのだ。なんの話ですか?と聞き返すと、老人のお節介だと付け足した。

よくよく思い返せば浸水したお店の復旧作業を手伝った後、確かおばちゃんはいつか二人にお礼させてねと言っていた。

九条さんの手前深く聞けなかったけど、もしかするとそのことかもしれない。そんなことスッカリ忘れていたし、まさかこんな風に返ってくるとは思いもしなかった。

意外や意外に策士なおばちゃん。そんなおばちゃんのどこか満足げな笑顔に見送られながら私達はお店を後にした。

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