溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「聞きたい」
「やっ、そんな……いきなり無理です」
「言わないなら、」
えっ?言わないならなに?とポカンとしていると、九条さんは赤信号で止まったのをいいことに、ギアをパーキングに入れ助手席へと乗り出してきた。
驚きながらパチパチと瞬きを繰り返す視線の先には野生的な瞳があって思わず息を飲む。もしかしてキスする気? ここで?
どうしていいかわからなくて、彼に見つめられたまま膝に乗せた手をギュッと握りしめ固まる。すると、九条さんの大きな手が私の後頭部へとまわった。
ドクドクと心臓が身体中で脈打つ。喉はカラカラと変な音を立てていた。
「西沢」
私の名前を呼ぶ掠れた声が聞こえた後、九条さんの影が私に覆い被さるように近づいてきて、静かに目を閉じた。
ーーーと、同時に。
プップーッと後ろの車にクラクションを鳴らされ、ハッとして視線を向ける。九条さんもその音にチッと舌打ちを零すと、私から離れ車を発進させた。