溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


「なんだ、また溜め込んでんのか。俺はこのまま連れて帰りたかったんだけど」
「うっ、へっ!?」

そういう意味?

「予想通りの反応をするな」

横目で視線だけ寄越し小さく笑う九条さん。
これが大人の余裕というやつで、半分おちょくって楽しんでいるんだろうけど、私なんてどこに視線を合わせていいのかもわからないくらい挙動不審で、手にはじわじわと変な汗が滲んでいる。

でもきっとそんなことすらお見通しで、心の中で笑っているに違いない。ちょっと悔しいけどこれも現実。

「そういえばお前の口から聞いてなかった」
「え? なにをですか?」
「お前の気持ち」

気持ちって……! もしかしてこの密閉された空間で気持ちを言えと?面白がってる?からかってる?言えるはずないじゃないか!

そもそも好きな人を前に好きだのなんだのって、生まれてから一度も言ったことないのに。
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