溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


「九条さん、あんたのことがよっぽど可愛いのね〜」

大急ぎで修正をかけていると、突如私の耳元で、囁くようなハスキーボイスが聞こえてきた。振り返るとそこには今日も強烈な化粧と、奇抜な衣装に身を包んだユリさんがいた。

「ユリさん……またそんな冗談を。逆ですよ、逆。私、九条さんに嫌われてるんです」
「何言ってるの。可愛い子ほどいじめたくなるって言うじゃない。本当はちょっと快感なんでしょ? 私もあのちょっと野獣っぽい顔でこれでもかってくらい罵られてみたいわ〜」

そう好き勝手言ってふふふと、九条さんに視線を送るユリさん。

……いやいや、怖いですから。ていうか、快感って。どんなドMよ。

「私はユリさんが羨ましいですよ。いつもノーミスだし、信頼されているし。私みたいに怒られたりすることもないですもんね」
「そうなのよー。困ったことに才能の塊だから、私」
「うぅ……いいなぁ」

こっちは切実だというのに。

< 2 / 291 >

この作品をシェア

pagetop