溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
一人ついていけず、ぼんやりとしていると突如朱音さんが私に視線を向けてきてドキリとした。
「青葉ちゃんも頑張って! 好きな人とうまくいくように応援してるから!」
「えっ……と、はい」
「残念だったね、京吾。青葉ちゃん好きな人いるんだって」
残念だったねって、え? それはどういう……? 聞きたかったけどもう朱音さんの独壇場で口を挟めない状況。
九条さんは我関せずといった感じで、早く嵐が過ぎてほしいと思っているような感じだった。無駄口を挟まない、それがこの場を早く乗り切る手段だとばかりに。
「だからもう待ち伏せしたりするのやめるね。たくさん相談に乗ってくれてありがとう。私、彗とまた付き合えるように頑張るから! それだけ言いにきたの! じゃ、お客さん待たせてるから行くね!」
最後はまくしたてるように言って朱音さんは仕事へ戻って行った。本当に嵐のような人だ。九条さんも朱音さんの背中を眺めながら大きくため息を吐いていた。