溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「で、どうだった?」
「どうだったって……言いませんよ」
「いいじゃないちょっとくらい教えてくれても。失恋した私への弔いだと思ってさ」
「弔いって……」
なんだそりゃ、とこぼしながらパソコンの電源を入れる。その間も椅子を軽快に転がしながら、まるでヤドカリのように近づいてくる。
「西沢を最初に抱くのは私だと思ってたのになぁ、残念」
「す、すみません……」
って、謝るのも変だよね。と思いながらぺこぺこと頭を下げる。もはや日本人の性。
「なになにー? なんの話してるんすかー? 俺も混ぜてくださいよ~!」
私たちの会話を嗅ぎつけた真壁くんが興味津々とばかりに駆け寄ってきた。
「あぁ、真壁。珍しく早いじゃない。西沢がついに九条さんに捕食されたって話をしてたのよ」
「ちょっ、もうユリさん!」
このおしゃべりめ!
「へぇ、ついに脱皮したんですか。よかったですね~西沢さん。まぁ売れ残ったら俺が面倒みてもよかったんですけどね」
「はぁ? あんたなんかに西沢を渡すわけないでしょ。九条さんに飽きたら次は私が先約してるの」
「冗談はやめてくださいよ。オカマより俺の方がいいに決まってます。そうですよね? 西沢さん」
私を間に挟んで好き勝手論争する二人。しかも無茶苦茶な質問までぶつけてくるものだからなんと返答していいのか困る。
「ところで当の九条さんはまだ出勤してないんですか?」
どっちを選べば角が立たないのかと真剣に考えていると、しびれを切らしたのか、そもそもどうでもよかったのか、私の返事も聞かずそう真壁くんが問う。
「あ……うん。なんか大事な話があるとかで社長に呼び出されて出かけてる」
「あら、そうなの? ついに世代交代かしら」
ユリさんのその声に、え?と真壁くんと同時に視線を向けた。