溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


「西沢」

キョトンとした顔で俺を見つめていた彼女を不意打ちに押し、プールへ突き落とした。

「きゃっ」

小さな悲鳴のあと、ドボンという水音とともに水しぶきが上がる。つい今まで静かだった水面が大きな波を作っている。

「もー! いきなりなにするんですか!」

すぐに顔を出した西沢が仁王立ちで眺める俺にそう抗議した。島出身ということもあってやはり水は得意らしい。特に焦る様子もなく、すでに気持ちよさそうに泳いでいる。

キラキラと水面に映る無数の光の中、サマードレスのまま泳ぐその姿はまるで人魚のようで、さっきまで潰れていた人間と同一人物には見えないほど活き活きしていた。

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