溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


「九条さんも来てくださいよ! 気持ちいいですよー!」

無邪気な笑顔で手を差し出す。誘われるがままその手を取ると「えいっ」とあたかも仕返しといわんばかりに引っ張られ、ドボンと落ちるように中に入った。

それにちょっと満足したのか、クスクスと笑いながら俺の腰に抱きついてきた。

ドレスはまるで尾ひれのようにひらひらと水中に浮かんでいる。すぐにその人魚を捕まえると腕の中に囲った。

「突き落とすなんてひどいですよ。この日のために水着買ったのに出番なしじゃないですか」
「後で見せて」
「それじゃあ意味ないですー!」

拗ねたように頬を膨らませる。そうかと思えば俺の額に自分の額をひっつけてきて愛らしげに笑った。

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