溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜



「すみません! お待たせしました!」

壊す気か、という勢いで開いた車のドアの先から現れたのは、真っ赤な顔をした西沢で、しかもその額からは大量の汗がしたたり落ちていて唖然とした。

確かに4月にしては暑いが、たかが待ち合わせでこんなにも汗だくになるものか?と不審感を抱く。

今日は結婚して一周年記念日とやらで、普段と違ったデートがしたいと言われたのが事の発端。

この数日、なにやら一人で計画を立てていた彼女から提案されたのが、待ち合わせをし、相手が来るのをドキドキしながら待ちたいというものだった。

そんな彼女の要望を叶えるため、めんどくさ!と思いながらも、わざわざ時間差で家を出て今にいたる。

それなのに、今朝家を出る直前まで入念におしゃれをしていた彼女が次に現れた時にはこの有様で。 髪は乱れ、化粧も剥がれ気味。良からぬ予感がしながら徐に口を開いた。

「どうしたんだよ、その汗。サウナにでも行ってたのか?」

ハンドルにもたれそう言うと、あからさまに視線を彷徨わせ、挙動不審になる妻。

……怪しい。まさか浮気か?


< 286 / 291 >

この作品をシェア

pagetop