溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
出会ったばかりの頃の彼女はどこか自信なさげで、私なんか、と口癖のように言っていた。なんの取り柄もない人間だと。
だけどまったくもってそんなことはない。なぜならそんな彼女に俺は全てを与えてもらったから。
夢に、野望に、家庭に。俺の望んでいたもの全てを手に入れられたのは彼女がいたから。彼女が俺を野心家にさせた。
俺にとって最強の女神と言っても言い過ぎではない。
「京吾さん! ほら、桜見えてきましたよ!」
屈託のない笑顔でそう言って俺を見上げる。
自分がそんな存在なのだとどのくらい自覚しているのかはわからないが、きっとこれから先も妻であり、恋人であり、部下である彼女に一喜一憂させられて、振り回されるんだろう。
「楽しみですね〜! 今日はいっぱい遊びましょうね!」
いまだに敬語が抜けない西沢も西沢だと思いながら、前を見据えたまま頷く。
この果てなく続く空の先には、希望しかない。
そう、もう君しか見えない。
Fin.


