溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
◇
「どっちがいい?」
「え?」
「さっさと選べ」
「えっ……っと、じゃあ緑で」
そう答えた私に、ん、と小さく言って九条さんは新品の歯ブラシを手渡す。
「着替えはとりあえずこれでいいか」
そして部屋に干してあったTシャツをハンガーから乱雑に外すと、立ち尽くす私に手渡した。
……ていうか、なんだこの状況。てっきり会社に連れて行ってくれるのかと思いきや、なぜか九条さんのマンションに連れてこられ、そしてなんの説明もなく現在にいたる。
まさかと思うけど、ここに泊まれと?