溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
九条さんのあまりのテキパキ具合に何も聞けずにいる私も私だが、呑気に歯ブラシの色を選んでいる場合じゃない。
「……あの、九条さん!」
ここはハッキリ聞こう。そう思い意を決したように口を開いたが、九条さんに遮られた。
「飯は?」
「へ? 」
「食った?」
「……あ、いや、まだです」
そういえばお腹がすいた。そう自覚すると、思い出したかのようにお腹がぐーっと鳴った。
「ならなんか作ってやる」
「えっ? 九条さんがですが? 料理できるんですか?」
「それなりに」
……うそ、意外すぎる。カップ麺すすって、不健康そうな生活をしているとばかり勝手に想像していた。でも確かに部屋は綺麗に片付いているし、おしゃれな観葉植物までおいてある。家事もそれなりにしているんだろうな。