溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


「はい、お待たせ青葉ちゃん。さんま定食大盛り」

小さく溜息を吐きながらこった肩をトントンと叩いていると、目の前にいい香りを漂わせながらさんま定食が出てきた。しかも今日は私の大好きな梅かつおのお味噌汁付きだ。

「わぁい、待ってました! いただきまーす!」

私は飛びつくように箸をつけると、さんまの骨をするりと抜き取り、ほぐした身をごはんと一緒に口一杯に頬張った。

「んー! おいしい!」

あぁ、生き返る。やっぱり人間の資本はこれだよな。

「ごはん最高ー!」

「魚の食い方綺麗だな、お前」

一人悶絶していると突然、聞こえてくるはずのない声が耳に入ってきて、条件反射のごとく体が浮き上がった。恐る恐る振り返ってみると、なぜか九条さんが私の背後に立っていた。しかも顎髭をなぞりながら、私の手元をまじまじと見ている。

なっ、なんでここに⁉︎

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