溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
そんな九条さんを見上げたままフリーズしていると、いつものあの目で、あ?と睨まれた。その瞬間、身体がびくんと竦む。
「なんだよ、来ちゃ悪かったか? 」
「……いっ、いえ」
「いつもの店が潰れたんだよ。そんな顔で見んな」
ガキ、と言って何故か私の隣に腰掛ける九条さん。私は慌てて俯いた。なんで隣にくるのよ。他にも空いてるじゃない。
「俺もこいつと同じやつ」
心の中で愚痴る私の隣で、九条さんはおばちゃんに端的にそう言って持っていたスポーツ新聞を広げた。本気でここで食べる気だ。まさか私の安息地にまで足を踏み入れてくるなんて。いつもなら絶対一緒にならないのに。九条さんの行く所は角のおでん屋と決まっていたのに。
もう、どうして潰れちゃったのよ!おでん屋の親父ー!