隣人はヒモである【完】
「……ライター」
「え?」
「ライター持ってる?」
「……ああ。……ライター」
良くない想像を働かせていたあたしに、おじさん……ていえるような年齢じゃないことが発覚したから呼べないけど、……レオさん、は、図々しい注文を付けてきた。
たしか、1か月ほど前芙美の誕生日で、ケーキのプレゼントをしたときに買ったライターが引き出しの中に。あったはず。
持って帰ってきて、捨てた覚えはないから多分。
思った通り、机の横の引き出しの底に、それ以来出番のなかった黄色のライターを見つけた。
「こんなんしかないですけど」
「十分。灰皿は?」
「え、ないです。タバコ吸わないし」
「えー。……あの缶は? 使わない?」
「捨てるだけ、ですけど」
「もらうね」
あ、ちょっと。と止める間もなく、キッチンに放置していた昨日飲んだ缶コーヒーの空き缶を目ざとく見つけたレオさんは、それに水をためると何の躊躇もなくあたしの目の前で胸ポケットから取り出した煙草に火をつけた。