隣人はヒモである【完】
狭い室内でこの男の吐いた煙は清潔だった空気を汚してく。
……なんの許可も取らないで。と、呆れた気持より先に逆にすごいじゃないかと感心してしまう。なんだこの図々しさは。ヒモの特性?
嗅ぎなれない煙草の匂いにややむせって軽く咳き込んだけど、特に謝られたりはせず、平然と煙を吐き出すこの人は、やっぱりなんか変なヒト。
「……なに? きみも吸う?」
「……いや。体に悪そうだし」
「そう? 一本くらい変わらないよ。副流煙いっちゃってるし」
「……」
あなたが吸うからじゃないですか、人の部屋で勝手に。
黙ったあたしを見て、何を勘違いしたのかレオさんは、新しい煙草を一本こちらに差し出してくる。
「うまいよ」
「……どうやるのかわかんない」
「火、つけてやるからくわえて」
ま、いっか。一本くらい。あたし未成年なんだけどなー。……ま、いっか。一本くらい。変わらないか。
男から煙草を受け取り、どうせ吸うなら中指と薬指ではさんで持ってみたかったけれど、なんか恥ずかしくて親指と人差し指で持った。