隣人はヒモである【完】
「くわえたら軽く吸って。……そうそう。……はい、ついた」
火のついたタバコを見て、レオさんはやたら嬉しそうに口角を上げる。
ついた。けど、どうすればいいんだこれ? 口から離していいんだっけ? 人が吸ってるのは見たことあるけど、自分がやるとなるとみんなどうしてたのか思い出せない。
異常だ。
自分が何をしているのか、何をしたいのかよく分からなくなってきた。ただし、この空間が異常であることはさすがにあたしも分かる。
すべてこの人のペースだ。
「はい、また吸って。……上手だね。様になってるよ。……ふかさないで肺に入れてみようよ」
「……おいしくない」
「えー」
上手だと褒められたものの、むせたりもしなかったものの、とにかくおいしくない。思ったよりずっとまずい。
こんなのの何にはまるんだろう。
眉をしかめたあたしを見て、男は残念そうに息を吐いた。
結局煙草は一瞬で空き缶の中に沈む。ちょっともったいなかったかな。
ていうか本当にあたし何してるんだろう。