ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】
「それから?」
淡々と話していたはずが、急に口を閉ざす里恵。
「いったい、なにがあったの?」
「…………」
彼女が、思い出したくないように視線を落とした理由はここからだった。
突然、里恵以外の小指を繋いでいた者たちが、砂浜のある箇所を指さしたらしい。
『あれはなんだ!?』と、口々に言いながら。
「私は目が悪くて、最初わからなかったんですけど……這ってきたんです。私たちの方に……変なものが」
その光景はまるで、産卵のために陸にあがるウミガメのようだったという。
“鬼”が振り返ると、微動だにしない“ソレ”。
普通なら恐怖で発狂して逃げるところ。
しかし、実態を掴みきれていない7人は近付いてしまった。
白い布に凹凸のあるふくらみ。
人間と呼ぶには、あきらかに足りないものがある……。
不審に思いながらも、ゲームを始めたことみの彼氏が、先端に覆いかぶさる“藻”のようなものを手に取った。
次の瞬間。
「う゛わぁ゛ああぁ――!!」
「ッ!?」
「……って」
臨場感溢れる叫び声の再現に、僕の心臓も悲鳴をあげる。
手に持ったのは、ぐっしょり濡れた長い髪の毛。
さらに、持ちあげた拍子に一瞬だけ見えた青白い顔。
皆は一斉に逃げだした。
砂浜に、手足のない女が打ちあげられたのだから。
「そ……そ、その長い髪が」
たどたどしく紡がれた断片的な情報。
だが、僕の頭の中ではすでに、ホラー映画がクライマックスを迎えていた。
「彼の手に巻きついて……海に……」
体格のいい男を引きずり、砂浜を這うダルマ女。
あまりの恐怖に放心状態に陥った一同は、海に引きずりこまれる彼を助けることができなかった。
さらに、正常な判断力も乏しくなっていて、警察に通報もしなかったと言う。