ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】



せっかく東京に行くんだから、ついでに会っておきたいヤツらがいる。

僕は夕方には秋葉原の、有名なシアターがある雑居ビルの1階で人を待っていた。

「ぉ! ゆういちろーう!」

最初に現れたのは、お腹の肉でベルトが見えないほど太り、日焼けした若者。

「ピンちゃん! 久しぶり」

本名は城間真昭。そのあだ名の由来は、一度フィリピン人にまちがわれたことがあるから、らしい。

沖縄出身のソース顔だ。まちがわれてもしょうがない。

「も゛―う! やめろよ~」

お腹の肉をさわって遊んでいると、キョロキョロしながら通りを横切る彼が見えた。

「タクミ!」

「……お、おっす! なんだよ、いきなりー。こっち来るなら、もっと早く言えよ!」

「ごめんごめん」

彼は深田巧。怖い話や都市伝説が大好きな“オカルトマニア”の、かなり変わったヤツ。

「意外とみんな早かったな!」

少し遅れて、杉山洋平と片平浩介がやって来た。

「杉山さん、久しぶりです」

「おう」

この中で杉山さんだけが1つ上。現在は浪人中のフリーター。

誘わないと、あとでなにを言われるかわからないから呼んだが、ぶっちゃけ僕はあまり好きじゃない。

「偶然、改札の所で杉山さんに会ってさ!」

逆に浩介は、僕や他ふたりの1つ下、高2だ。

敬語の遣い方を知らないが、可愛い後輩だ。

10分もしないうちに、次々とLINEで集ったメンバーが到着。

全員で5名。

僕らを繋ぐモノ、それは国民的アイドルグループ。

もともとSNSのコミュニティーで知り合い、情報を共有し合ううちに、こうして行動をともにするようになった。

「んで、どうする?」

リーダーを気取りたがる杉山さん。

「やっぱショップに行くっきゃないでしょ!」

ピンちゃんが親指を上に突き立てておどける。

「「だね!」」

「ゴーゴー!」

満場一致で、僕たちは雑居ビルの中に入った。

エスカレーターで縦一列に並び、まるで天国に昇るような気持ちの高揚が目に見えてわかる。

とくに僕は、頻繁に通えないだけに、不覚にも心が踊っていた。



 
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