ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】
近付いてくるサイレン。
車のドアが閉まる音。
人の話し声。
そこで、僕は目を覚ました。
まっ先に目に飛びこんできたのは、雨の粒。
……生きてる……。
身体を起こすと、なぜか、木の陰に横たわっていた。
警戒を促す赤色灯が、等間隔に周囲を照らしだす。
光の原点に目をやると、正門脇の職員通用口の前で、言い争っているような3人が見えた。
制服を着た警察官がふたり、警備員と思しき人物がひとり。
会話の内容がここまで聴こえてくる。
「本当に通報してないんですか?」
「ええ!」
「女性の声でしたが、こちらに女性の方は?」
「今夜はいません。泊まりこみの職員にも」
「……単なるイタズラですかね。一応、念のために園内を見させていただいてもよろしいですか?」
「えぇ、構いませんよ」
通用口の扉を開けたまま、3人は中に消えた。
そう、安心という隙が今、生まれたのだ。
「ぁ! アイツ!」
タイミングを見計らったように、スッと園内に入っていく人影。
浩介だ。
……これ以上追えば犯罪になる。
立派な不法侵入だ。
しかし、目的を確かめたい僕は、忍び足で園内に入った。
すぐさま、檻の中で妖しく光る瞳の大群に出くわした。
歓迎とはほど遠い、威嚇の花道。
真夜中の訪問者に、四方八方から雄叫びがこだまする。
……どこだ……。
迷い、怯え。
弱肉強食の頂点にいるはずの人間が、今は動物たちのテリトリーで弱く、もろい。
どれくらいの時間をさまよっただろうか。
ある檻の前に、浩介はいた。
無気力に、フラリフラリと揺れている。