ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】



――チトッ、チトッ。


――チトッ、チトッ。


この音は、雨粒が身体から滴る音ではない。

檻の中を猛獣が徘徊する足音だ。

「ッッ!?」

僕が瞬きをした瞬間、浩介の顔がこちらを向いていた。

ニヤッ。

彼は妖しく微笑む。

「っ゛……」

文字でも絵でも表現できない畏怖。

この目に映っているのは動物や人間をも、はるかに凌駕するイキモノ、ライオンだった。

次に、一歩。

……なにをする気だ!?

また一歩と、浩介は檻に近付いていく。

そして、一切のためらいを見せず、鉄格子の中へ“手”を入れた。

「や゛め……」

言葉を放ったときには、すでに遅く。

――グシュッ!

――バキッバリバリバリッ!!

あたりに骨肉の張り裂ける音が鳴り響いていた。

「っ゛あ゛あ゛ぁ゛っー!」

僕には想像すらできないその痛みを、壮絶な絶叫で表現する浩介。

――ガタガタガタガタッ。

鉄格子の狭間で、ピンボールのように激しく揺れる身体。

「浩介!」


 
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