ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】
午前3時。
“その時”が来る。
「いい? あのときと同じように、“ダルマさんが転んだ”をやれ! なにが起こっても逃げない。それが、助かる方法だ」
携帯の画面に指を置きながら、ゆっくりと話す。
指し示すのは、“終わりの儀式”と書かれている1文。
里恵があのとき、僕にしたように。
鏡があれば見てみたい。僕が今、どんな表情をしていたのか。
震える足で木に向かうふたりを見るかぎり、相当、自信に満ちあふれていたにちがいない。
「わかった。やるよ!」
「……ゴクッ」
結局、最も重要なことは言わなかった。
“小指を伊達磨理子に噛み切られて終わる”
……僕が当事者なら、そんなこと知らない方がいい。
罪悪感に苛まれる中、自分自身にそう言い聞かせる。
ふと杉山さんが、そこに立つ大木を眺めた。
……ん? すごいこと思いついたかも!
それはさておき、3時3分。
「時間だ。絶対に、小指を離すなよ!」
僕はふたりに最後の忠告をした。
「わ、わかった」
「うん」
いざ、終結のとき。
鬼が木に腕をかざし、呪文を唱える。
「ダルマさんが転んだ!」
静まり返る公園に響く杉山さんの声。
「「…………」」
……本当に、現れるのか?
「ダルマさんが転んだ!」
……来い、来い!!
「ダ・ル・マ・さ・ん」
ザザザザザザッッ――
「「来た!!」」
例の音、つまり這いずる、霊の音。
視界は、夜から闇にフッと堕ちた。
ズズザザザザザッ――
「どこだ!?」
ピンちゃんは公園の隅々を見渡す。
僕も。鬼も。
……クソッ!
やはり、僕には見当たらない。
浩介が死んだ夜には気付いていた。これが、ゲームに参加していない者の宿命。
だが、今宵はそうじゃないらしい。