ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
すっかり陽の上がった朝のこと。
取調室にいた僕の元へ、名刺をくれたあの刑事たちが現れる。
「彼は私たちのほうで預かります」
まさに鶴の一声。小手先の手招きについて廊下へ出ると、ふたりはそそくさと前を歩きはじめた。
「え、ん?! あいつらは?」
「……あぁ。友達にはもう少し話を訊きたくてね」
そう含みを持たせ、警察署の前に停めていた車のドアを開ける。
「待ってください! 僕だけ、どうして?」
立ち止まって乗車を拒むと、浜田が諭すように僕の背後に回った。
「彩矢香ちゃんだっけ? 彼女がキミの財布やらを持ってるんだろ?」
その通り、僕のポケットには何も無い。
「こっち的にも好都合でね、ふたりに見てほしいモノがあるだよ。だから、さぁ乗って」
ポンッと肩に落とされた手のひら。まんまと僕の興味を手中に収め、自然と足が前に出る。
豪快にドアが閉められた後、ネクタイを気遣いながら助手席に乗りこむ浜田。
ハンドルを握る斎藤とふたりして下手な笑みをこちらに向けて、僕は思った。
本当に乗せられたのは“口車”だと。
にしても、やはり気になる。
何故僕だけなのか。逆を言えば、何故あの3人が解放されないのか。
今一度訊いてみるが、
「その話はあとでじっくりね」
と、軽くあしらわれた。
身体までかゆくなりそうなウズウズとした感情を抑えるために、窓から流れる街の移り変わりで紛らわす。
田舎者なら恍惚とするであろう都会の建造物をいくつも横切り、ようやく案内標識に田園調布の文字。
そして、他の邸宅より一際大きく立派な門扉の前で、車のエンジンが切られる。
斎藤の押したインターフォンに応対したのは母親だったが、出迎えてくれたのは彩矢香だった。