ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】




美佐子が席から離れると、玄は思い出したようにポケットから携帯を取り出す。

「オレなりに色々調べてみてん。で、これを見つけたんや」

玄が着目したのは、伊達磨理子という女の素性だった。

「伊達事件の真実?」

「あぁ」

ディスプレイに映し出される、2015年の1月に刊行された本の表紙画像。

内容の部分にはこう書かれていた。


【冷酷な欲望渦巻く事件の闇に葬られし、伊達磨理子という哀しき女性の生涯。】


「あ!」

いた。

「もしかしたら、公園に現れた霊は……」

「ま、まさか……」

間近で見た僕と彩矢香は顔を見合わせる。

得体の知れない存在の正体が判明すると、こんなにも現実味を帯びる恐怖。

即座に却下した可能性が、ここにきて急浮上する。

まさかの、これが、連続殺人を終わらせる糸口か。

「じゃ、その本を書いた人に話を訊いたら、何かわかるかも!」

彩矢香も同じように感じているのか、僕よりも先に口火を切った。

だが、真実はそう易々と尻尾を出さない。

「いや。掘り下げてみたら、これを書いたサエノショウキって人は今、行方不明だってことがわかった。自殺したって記事もある」

そして——。

「ちょっと待って! 電話だ」

僕の携帯を鳴らす、康文。

『ヤス、どうした?』

『タツミ。聞いてくれ! 今さっき、小学校の同級生から星都中のことを訊きだした』

半ば興奮気味に語られるその内幕が、ロジックの鍵を粉々に粉砕する。

『有村そらも……自殺⁉』

『うん。はるかが死んでた舞台で、まったく同じように』

『な゛⁈』

絶望にも似た驚愕。

僕らを取り巻くのは“亡き者”ばかりで、常識も論理も喪に服した。

「どうしたの?」

戻ってきた美佐子が僕の異変に気付き、傍らに立ったままこの事実を聞く。

——…………。

謎に次ぐ謎。もうお手上げだ。

やはり、ここにいる者を疑うしかないのか。



 
< 114 / 160 >

この作品をシェア

pagetop