ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
美佐子が席から離れると、玄は思い出したようにポケットから携帯を取り出す。
「オレなりに色々調べてみてん。で、これを見つけたんや」
玄が着目したのは、伊達磨理子という女の素性だった。
「伊達事件の真実?」
「あぁ」
ディスプレイに映し出される、2015年の1月に刊行された本の表紙画像。
内容の部分にはこう書かれていた。
【冷酷な欲望渦巻く事件の闇に葬られし、伊達磨理子という哀しき女性の生涯。】
「あ!」
いた。
「もしかしたら、公園に現れた霊は……」
「ま、まさか……」
間近で見た僕と彩矢香は顔を見合わせる。
得体の知れない存在の正体が判明すると、こんなにも現実味を帯びる恐怖。
即座に却下した可能性が、ここにきて急浮上する。
まさかの、これが、連続殺人を終わらせる糸口か。
「じゃ、その本を書いた人に話を訊いたら、何かわかるかも!」
彩矢香も同じように感じているのか、僕よりも先に口火を切った。
だが、真実はそう易々と尻尾を出さない。
「いや。掘り下げてみたら、これを書いたサエノショウキって人は今、行方不明だってことがわかった。自殺したって記事もある」
そして——。
「ちょっと待って! 電話だ」
僕の携帯を鳴らす、康文。
『ヤス、どうした?』
『タツミ。聞いてくれ! 今さっき、小学校の同級生から星都中のことを訊きだした』
半ば興奮気味に語られるその内幕が、ロジックの鍵を粉々に粉砕する。
『有村そらも……自殺⁉』
『うん。はるかが死んでた舞台で、まったく同じように』
『な゛⁈』
絶望にも似た驚愕。
僕らを取り巻くのは“亡き者”ばかりで、常識も論理も喪に服した。
「どうしたの?」
戻ってきた美佐子が僕の異変に気付き、傍らに立ったままこの事実を聞く。
——…………。
謎に次ぐ謎。もうお手上げだ。
やはり、ここにいる者を疑うしかないのか。